
J12 はシャネル腕時計の宝庫において、まさに「百科全書」のような存在だ。
古さを感じさせるかどうかはともかく、誕生からこの 9 年間、絶えることなく驚きを届け、見れば見るほど飽きの来ない名作である。
決して 1987 年に発売された初号モデル「プルミエール」が優美さに欠けるわけではないし、
新作プルミエールコレクションも間もなく登場するのは周知の通り。
それでもシャネルの腕時計と聞けば、私を含め多くの人が真っ先に J12 を思い浮かべる。
J12 トゥールビヨン ホワイトゴールド ダイヤモンド腕時計
2000 年に誕生した J12 は、シャネルが高級時計分野へ本格進出する決意を象徴するモデルだ。
デザイン芸術ディレクター ジャック・エルーはかつてこう語った。
「完璧な黒を探し求め、J12 のために 7 年の歳月と心血を注いだ」と。
確かに、ハイテクセラミック製のケースとベルトからは、他に類を見ない気品漂う黒の質感が溢れ出ている。
J12 はシャネル初のスポーツウォッチであり、同ブランドが初めてハイテクセラミックを採用した製品でもある。
その存在感は、同素材を先に使ったラドーをも超えて人々に定着した。
またシャネルは J12 のため、スイス ラ・ショー・ド・フォンに時計製造工房を設立し、専門に生産体制を整えるほど力を注いでいる。
J12 オートジョワイエリ ホワイトゴールド ダイヤモンド腕時計
評するなら、J12 は野望を秘めた気品ある貴婦人のような存在だ。
当初の 3 針モデルから、2002 年にクロノグラフ機能を追加、
続いてブランドの十八番であるダイヤモンドセットを導入、
次々と限定コレクションを発表し、2005 年にはついにトゥールビヨンモデルで高複雑機構時計の領域へと踏み入った。
着実に一歩ずつ、その領域を拡大してきたのである。
伝統的な価値観に固執する批評家の中には
「所詮ファッション時計、売れ筋とダイヤで人気を稼いでいるだけ」と揶揄する声もあった。
だが昨年、シャネルがオーデマ・ピゲと共同開発した自社製 Cal.3125 機械式ムーブメントを正式発表したことで、
そんな人々も納得せざるを得なくなった。
ピゲ傘下の時計工房が手がけた作品に、プロフェッショナル性がないはずがない。
そして今年、この「貴婦人」は大人の審美眼を持つ男性層にも歩み寄る。
バーゼルウォッチフェアで J12 初のレザーベルト仕様が登場し、
煌びやかなジュエリー仕様を好まない男性たちからも大きな支持を集めた。
J12 ピンクゴールド ブラックハイテクセラミック ジュエリー腕時計
ここまで見れば、誰もが J12 がすっかり成熟し、優雅で落ち着いた佇まいを確立したことに納得するだろう。
ここで気品溢れる 3 モデルを紹介する。
左のモデルは最も高額なわけではないが、ブラックセラミックと 18K ピンクゴールドの組み合わせは近年人気を博す定番スタイル。
シャネルの手によりベゼルにはバゲットカットダイヤモンド 46 石(総計 4.5 カラット)、
文字盤にはダイヤモンドインデックス 8 石、リューズにはブリリアントカットダイヤモンド 1 石をセッティング。
全世界限定 200 本(38mm・33mm 各 100 本)、幸運な 200 人だけが所有できる逸品だ。
2 点目の J12 オートジョワイエリは、最も華やかな代表作。
ケース径 42mm、18K ホワイトゴールドケースに無数のダイヤモンドがちりばめられ、数え切れないほどの輝きを放つ。
見る者を圧倒する煌めきは、どんな女性に贈っても心を掴んで離さない。
最後は J12 トゥールビヨン。
シャネル 0.5‑T.1 手動巻きムーブメントを搭載し、4 年前のモデルよりダイヤモンドのセット数を増強。
裏蓋からはホワイトセラミック製のムーブメントベースプレートが覗き、
熟練の技が円熟の域に達したことを物語っている。